Unrealistic Dreamers

2011年6月9日、スペインのカタルーニャ国際賞授賞式で、作家の村上春樹が「非現実的な夢想家」と題したスピーチをおこなった。

 

……我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならないのです(村上春樹)

 

2012年6月8日、この国のリーダーは「現実的な無想家」という立場から「非現実的な夢想家」を嘲るという決断を選択した。村上春樹はスピーチのなかで、「効率」や「便宜」によって生み出された過ちについて触れている。非難されるべきは、電力会社や政府は当然のことながら、我々自らでもある、と。我々は被害者であると同時に加害者でもある、と。だけど気がつけば、過ちを見つめ直しているのは我々だけで、断罪されて然るべき電力会社や政府は「効率」や「便宜」の名のもとに、同じ過ちを繰り返そうとしている。僕たちは改めて、「非現実的な夢想家」の意味を考える必要があるのだ。